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注目の制作会社の視点を探る
―Webサイトの構築・運用からドメイン名選定まで⑧―

常に「より良く」を追い求め緻密なこだわりで付加価値を提供する
―株式会社ディーゼロ―

創立当初は、デザイン分野に特化していたディーゼロ。現在は、より上流からクライアントの課題解決をサポートする総合的なクリエイティブ集団となっている。時代とともに変化する顧客のニーズに応え続けてきた結果、このように進化してきた。そんな同社はいま、どのような仕事を手がけているのだろうか。取締役/CPO、プランニング部の黒木ヨウドウ氏、クリエイティブデザイン部の屋代敬介氏に話をうかがった。

「more+」で顧客と自社の成長を促す

ディーゼロという社名には「デザインをゼロから考える」という由来があるが、現在はデザインのみならず、幅広い領域を手がけている同社。その変化の経緯を、黒木ヨウドウ氏は次のように語る。

「いろいろなことをやっている会社に見えるかもしれませんが、時代ごとにクライアントに必要なことを追いかけていくうちに対応領域が増えました。その結果がいまのディーゼロです」

同社では、「more+(モアプラス)」というキーワードを大切にしている。「お客様の成長こそが私たちの成長である」という信念のもと、依頼されたことを遂行するだけではなく、付加価値も提供することを心がけている。最近の傾向としては、「コンテンツの質にこだわる企業が増えた印象がある」という。そのためにディレクトリマップの設計やサイトのターゲットとなるペルソナの設定を緻密に行い、より良いサイトの姿を追求してきた。そうしたこだわりが存分に発揮されたのが、フォント制作会社「フォントワークス」が提供する年間定額制フォントサービス「LETS」のサイトだ。

「数々のフォント情報を扱うこのサイトには、デザイナーを中心に複数のターゲットユーザーがいます。それぞれのユーザーが必要とする情報にたどり着きやすくするために、コンテンツを整理し、ナビゲーションを考え抜きました」(黒木氏)

また、博多織の製造販売を行う「サヌイ織物」のコーポレートサイトでは、多くの人に博多織の魅力を伝えるため、写真を印象的に用いている。予算的にはフリー素材という選択肢もあったが、より本物の魅力を伝えるため自ら撮影を行ったと屋代敬介氏は語る。

「博多織に対する若者の認知が低いという課題があり、若者にもその良さを伝えるためにはインパクトのある写真を用い、表現の幅を狭めないことが大切だと考えました」

「日本発」と「信頼性」が伝わる ドメイン名を活用

前出のLETSでは「.jp」が、サヌイ織物では「.co.jp」が使われている。

「海外のユーザーもいるLETSでは、日本語フォントを扱うサイトであることをアピールするために『.jp』を提案し、サヌイ織物はコーポレートサイトのドメイン名として信頼度の高い『.co.jp』を提案しました。我々がドメイン名に関わる場合、特別な事情がない限りは、『.jp』または『.co.jp』を提案しています」(黒木氏)

スマホサイトを600mスクロールさせるというユニークなアイデアを実現した「あごだしチャレンジ」のサイトでも、その考え方は同様だ。

「古くから日本にある『あごだし』が企画のテーマだったので、日本発を訴求するために『.jp』を利用しました」(黒木氏)

同社がドメイン名を提案する場合には、「わかりやすさ」にも配慮している。

「無理に短くすると企業名や商品名が伝わりづらくなってしまったり、逆に覚えられなくなったりしてしまうので、多少長くなってもわかりやすさを優先するのが良いのではないかと考えています」(黒木氏)

このように細部の付加価値まで配慮して考えるディーゼロは、今後どのように進化していくのだろうか。

「社員も含め、自社に関わるすべての人の満足度を高めていきたいです。Web業界は産業として広くなり、働き手として関わる人も増えています。それぞれの人が望む働き方を提供し、我々に関わるすべてのステークホルダーを幸せにしていきたいのです」(黒木氏)

同社には、顧客やエンドユーザーはもちろん、社員という重要なステークホルダーに対しても「more+」の思いが行き届いているようだ。

年間定額制フォントサービス「LETS」
「筑紫書体」など、デザイナーに愛されるフォントを数多く提供するフォントワークスによる、年間定額制フォントサービスのサイト。以前はプロモーションコンテンツと会員向けコンテンツが混在していたが、両者を分離し、誰にとっても使いやすいサイト構造へとリニューアルした。コーポレートロゴ、会社案内、会社紹介ムービーなども手がけている。「デザイナーのツボをつくデザインや仕掛けを施し、とても楽しく取り組めた案件でした」と屋代氏

株式会社ディーゼロ

「お客様の成長こそが私たちの成長である」を信条とし、福岡を拠点に活躍するクリエイティブ集団。プランニング、クリエイティブデザイン、テクニカルデザインを柱に、企業の課題解決を総合的にサポートする。国産CMS「baserCMS」のプラグイン「BugerEditor」の開発も手がける。左から黒木ヨウドウ氏、屋代敬介氏

博多織 サヌイ織物

日本三大織物の一つ博多織の製造販売を手がけるサヌイ織物のコーポレートサイト。創業70年近い歴史を持つ老舗企業でありながら、それまで自社サイトを持っていなかった。財布や名刺入れ、ネクタイなど現代人のニーズに合わせた小物を開発している先進性をアピールし、企業と製品の魅力を伝えることを心がけたという。ディーゼロが手がけた写真と、博多織をモチーフにした背景画像が印象的だ

あごだしチャレンジ2016

」の主力商品である「あごだしつゆ」のキャンペーンサイト。あご(トビウオ)の飛行距離にちなんで、600mもの距離をスマートフォンでスクロールさせ、最後まで見た人に抽選で賞金6万円をプレゼントするというもの。「検証は大変でした」と屋代氏は笑うが、ユニークなアイデアを実現し形にした制作力はさすがの一言だ (※キャンペーンは終了)

JPドメイン名の種類

JPドメイン名は大別して3つの種類がある。それぞれの特徴や意味を把握しておこう。

汎用JPドメイン名:◯◯◯.jp

日本国内に住所を持つ組織・個人であれば、誰でもいくつでも登録できる。漢字やひらがな、カタカナといった日本語を使った、わかりやすく覚えやすいドメイン名にすることも可能

都道府県型JPドメイン名:○○○.aomori.jp/○○○.東京.jp など

日本国内に住所を持つ組織・個人であれば誰でもいくつでも登録できる。北海道から沖縄まで47都道府県すべてあり、○○○の部分と都道府県名の部分は日本語でも登録できる。地域とのつながりをアピールしたいサイトにおすすめ

属性型JPドメイン名:◯◯◯ .co.jp など

企業(co.jp)や大学(ac.jp)など、組織の種別ごとに区別されたドメイン名。日本で登記/設立された組織が、一つの組織につき一つだけドメイン名を登録できる。また、組織設立の6カ月前から登録できる(仮登録)制度もある

企画協力:株式会社日本レジストリサービス(JPRS)

Web Designing 2018年8月号 掲載