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注目の制作会社の視点を探る
―Webサイトの構築・運用からドメイン名選定まで⑥―

Webブランディングの徹底で企業の真価を世に届ける
―株式会社それからデザイン―

Webサイト制作を中心に、企業や商品のCI(Corporate Identity)/ VI(Visual Identity)なども手がける(株)それからデザイン。同社が重視するのは、企業や商品の本質的な魅力を表現し、発信すること。彼らは、その活動を「ブランディング」という言葉で表現している。具体的に、どのようにブランディングを行っているのか。代表取締役の佐野彰彦氏、執行役員の永井史威氏に話をうかがった。

株式会社それからデザイン
https://www.sole-color.co.jp/

左から永井史威氏、佐野彰彦氏

「考える種を蒔く、幸せをつくるために」という企業理念のもと、Webサイトをプラットフォームに企業や商品、サービスのブランディングを行うデザイン会社。顧客と密接な関係を構築し、ときには商品開発や企業理念の再構築に関わることもある、Webの枠を超えたブランディングカンパニー。

“ブランディング”は真価を伝えること

それからデザインでは、「クライアント企業やその商品が持つ本質的な良さを伝え、成果に繋げる」ための活動を「ブランディング」と定義している。同社は、ブランディングを重視する理由を次のように語る。

「生活にWebが浸透している昨今、多くの消費者が、広告やSEO対策によって目に留まりやすくされた情報に耐性を持つようになってきました。そんな状況で成果を出すために最も理に適っているのが、Webをプラットフォームにブランディングすることなのです」(佐野氏)

同社では、ワークショップ形式でクライアント企業と対話し、ユーザーの緻密なペルソナやカスタマージャーニーを設計しながら、ブランドコンセプトを見出していく。クライアント企業の深層に関わることになるため、ときにはサイト制作の枠を超えることもある。「PAINTING WALL」は、その典型例だ。

「PAINTING WALLは、誰でも簡単に美しく壁を塗ることができる独自工法のブランドです。当初はプロ施工者向けの製品しかなかったのですが、サイトの内容を考えていくなかで、一般のDIY愛好者に向けた製品を提案し、実際に商品化されました」(佐野氏)

また、ブランドコンセプトが伝わる「コンテンツ企画」と「言葉づくり」にもこだわっている。

「単に商品やサービスのスペックを羅列するのでは、ブランドの価値は伝わりません。デザインはもとより、言葉や文章で商品やサービスの魅力を表現することで伝わっていく。だから私たちは、“Webは読み物”だと考えています」(佐野氏)

「たとえば、ネジなどの精密部品を製造するミズキは高い技術力や価格競争力、世界に通じる品質保証のノウハウを持つ会社です。同社の“ものづくりの現場”を取材し、Webサイトにその強みをストーリーで伝えるコンテンツを制作しました」(永井氏)

ブランドコンセプトを作るためには、クライアントの内面を深く理解することが必要だが、一方で「隠された魅力」を引き出す客観性も欠かせない。このバランス感覚が、それからデザインの強みでもある。

PAINTING WALL
http://www.paintingwall.jp/
安全塗料(株)が開発・販売する、「誰でも、簡単に」壁を塗ることができるペイント壁工法のブランドサイト。それからデザインはブランドコンセプトの構築、ロゴ制作のほか一般向けの製品開発まで携わった。その製品はグッドデザイン賞を受賞。「顧客とともにコンテンツ開発を行った理想的な事例の一つ」と佐野氏

ドメイン名もブランドを構成する要素

PAINTING WALLは「.jp」を、ミズキは「.co.jp」をドメイン名に用いている。

「グローバル展開を意識するクライアントは、“メイドインジャパン”をアピールするため、『.co.jp』や『.jp』を選ぶ場合が多いです」(佐野氏)

海外ブランドの日本展開にも有効だ。

「スウェーデン発の高級ラグのブランド『KASTHALL』の日本版サイトを手がけた際には、日本でも展開していることを打ち出すために『.jp』を提案しました」(永井氏)

同社では、「ドメイン名からもブランドが想起される」と考えている。

「弊社は、当初私個人のデザインオフィスとして立ち上げ、その際には『.com』を使っていました。法人化したときに、国内に登記がないと登録できない『.co.jp』を登録し嬉しく思いました。『.co.jp』は、きちんとした法人であるという信頼に繋がるドメイン名だと思います」(佐野氏)

一方で、「既存のドメイン名を、変えない方がいい場合もある」とも話す。

「ドメイン名がすでに認知を獲得している場合、変えると既存顧客との繋がりが途切れてしまうこともあります。それだけに、最初にドメイン名をきちんと考える必要があります」(永井氏)

そんなこだわりの強いそれからデザイン。将来は、こんなビジョンを持っているという。

「Webは企業経営の大きな武器です。だからこそWebに精通したクリエイターが経営の本質的な部分に参画できるようになるべきです。私たちはセミナーやワークショップでそのノウハウを共有し、Web業界全体を盛り上げたいと考えています」(佐野氏)

ミズキ
http://www.mizuki-corp.co.jp/

神奈川県に本社を構える(株)ミズキのコーポレートサイト。「日本発、世界に通用する部品メーカー」というブランドコンセプトのもと、その価値・強みを伝えるために複数の読み物コンテンツを用意。サイトやロゴだけではなく、企業パンフレットや名刺、社章等、各種CIツールのデザインも、それからデザインが手がけた

KASTHALL
http://www.kasthall.jp/

スウェーデンの高級ラグ・カーペットのブランド「KASTHALL(カスタール)」。「なぜ高級なのか」を丁寧に説明することに注力した。本国サイトのコンテンツを整理し、日本人の感性に響くように再構成している。デザインマネジメントのほか、文章のリライトなども永井氏が担当

JPドメイン名の種類

JPドメイン名は大別して3つの種類がある。それぞれの特徴や意味を把握しておこう。

汎用JPドメイン名 ◯◯◯.jp

日本国内に住所を持つ組織・個人であれば、誰でもいくつでも登録できる。漢字やひらがな、カタカナといった日本語を使った、わかりやすく覚えやすいドメイン名にすることも可能

都道府県型JPドメイン名 ○○○.aomori.jp ○○○.東京.jp など

日本国内に住所を持つ組織・個人であれば誰でもいくつでも登録できる。北海道から沖縄まで47都道府県すべてあり、○○○の部分と都道府県名の部分は日本語でも登録できる。地域とのつながりをアピールしたいサイトにおすすめ

属性型JPドメイン名 ◯◯◯ .co.jp など

企業(co.jp)や大学(ac.jp)など、組織の種別ごとに区別されたドメイン名。日本で登記/設立された組織が、一つの組織につき一つだけドメイン名を登録できる。また、組織設立の6カ月前から登録できる(仮登録)制度もある

Web Designing 2017年10月号 掲載