より安全で安定したインターネットへ、
私たちにはその使命がある。
今日の社会において欠かせないインフラとなったインターネット。その重要な機能の一つがDNS(ドメインネームシステム)だ。メールやウェブサイトなどインターネットのあらゆるサービスは、このシステムがあるからこそ利用できる。DNSを動かすサーバーの安全な運営・管理という重責を担い、実現している日本レジストリサービス(JPRS)の松浦孝康氏が、その使命と志を語る。
24時間365日、システムダウンは許されない
私たちがインターネットをごく自然に生活や仕事に利用できるのは、目に見えないところでいくつもの仕組みが働いているからです。その一つがDNS(ドメインネームシステム)。DNSは、インターネット上のコンピューターに割り振られる「IPアドレス」という番号と「○○○.jp」など人間にとって認識しやすい文字列の「ドメイン名」を結び付け、ウェブサイトへのアクセスやメールの送受信ができるようにするものです。インターネット接続のカギとなるドメイン名のうち、日本のccTLD(国別トップレベルドメイン)である「.jp(JPドメイン名)」で終わるものの登録・管理やDNSサーバーの運用を行っているのが私たち日本レジストリサービス(JPRS)です。
もし私たちが運用するDNSサーバーが止まってしまったら――。「.jp」で終わるメールアドレスやウェブサイトが全部使えなくなってしまいます。言い換えれば、インターネットの世界から日本がなくなってしまうようなものなのです。さまざまな製品やサービスにインターネットが取り入れられた現代の社会は、メールやウェブサイトなどを問題なく使えることを前提とした社会と言ってもよいでしょう。ですから私たちの責任は極めて大きいと感じています。DNSサーバーがダウンしてしまうことは絶対に許されません。その使命感と緊張感を胸に、24時間365日体制で、システムの維持、管理に取り組んでいます。
インターネットとともに日々進化する
インターネット上には、DNSの安全・安定な運用を脅かすさまざまな脅威が存在し、メディアでも取り上げられて話題になります。また、トラフィックの急増やソフトウエアの問題など技術的な原因で起こるトラブルもあります。残念ながらこれらをゼロにすることは不可能です。しかも、インターネット技術の進歩は速く、日々新しい問題が発生します。それらはこれまでの方法では対応しきれない場合も多く、手探りの中で解決策を早急に自分たちで見つけ出さなければなりません。インターネットとともに自分たちも日々進化すること――。これはDNSサーバーの運用を任されている私たちに課せられた使命でもあります。
また、DNSは複数のサーバーや関連組織が互いに連携することで、より安全・安定な運用を実現できる技術です。そのため、DNSにかかわるすべての関係者が、それぞれの役割をきちんと果たすことが重要です。そのため、時にはISP(インターネット・サービス・プロバイダー)やITセキュリティの業界団体など、さまざまな関係組織と連携し、業界全体で協力して脅威に立ち向かっていくことも私たちの重要な役割です。
JPRSは設立以来、一度もDNSサーバーをダウンさせていません。また、JPドメイン名の高い安全性の維持・向上のため、DNSサーバー設定を定期的にチェックし、ドメイン名が悪用されないように危険性を排除する取り組みも行っています。2010年にアメリカのマカフィー社が発表した調査報告書で、JPドメイン名のウェブサイトの99.9%が安全であるとの評価もいただいています。これも私たちの地道な取り組みが実を結んだ結果の一つであると考えています。
国際組織とも連携し、インターネットの今と未来に貢献
JPドメイン名の登録・管理やDNSサーバーの運用と並んで、私たちはもう一つ大きな役割を担っています。それは世界規模で連携し、インターネットの未来を創っていくこと。例えば、ドメイン名やIPアドレスといったインターネット資源を管理し、全体の調整を担当する国際組織「ICANN(アイキャン)」への参画もその一つです。JPRSは日本代表として、世界各国のccTLD登録管理組織と連携し、方針策定やインターネットの安全で安定した運用に向けた取り組みを行っています。
また、アジア太平洋地域のccTLD連合組織「APTLD」やヨーロッパを中心としたccTLD連合組織「CENTR」、さらにはインターネット技術の標準化、開発を行う「IETF」など、さまざまな国際組織にも参画し、連携を図っています。
インターネットの世界に国境はありません。世界とのかかわりの中で、インターネットをより安全で使いやすいものにしていくのも私たちJPRSの使命です。これからもJPRSはDNSサーバーの高い安定性を守るとともに、インターネットの世界全体の発展に貢献していきます。