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注目の制作会社の視点を探る
―Webサイトの構築・運用からドメイン名選定まで⑫―

クライアントの真価を見出し
最適なブランドを構築する
―株式会社VOICE―

単なるデザイン会社ではなく、ブランド構築企業としてクライアントに携わることをミッションとするVOICE。だからこそ、Webサイトだけを課題解決の手段として捉えるのではなく、“クライアントの本当の価値”を見つけ出した上で最適なアウトプットを提供することを心がけているという。真価を見出すアプローチの背景にある、VOICEならではのノウハウとはどのようなものなのか。同社プランナーの塚田佑哉氏に話をうかがった。

自社プロジェクトの知見を還元しクライアントに成果をもたらす

クライアントを尊重し、正しい価値の提供にこだわるVOICE。そのために大切にしているのが、クライアント自身が気づいていない“本当の価値”を見出すことだと塚田氏は語る。
「お客様は気づいていないだけで、磨き上げていけば強力な武器になるようなものを持っているケースが多々あります。それを見つけ出し、磨き上げていくことが僕たちの仕事だと思っています」

そのためにVOICEは、できる限り直接取引にこだわり、クライアントとの密なコミュニケーションを心がけている。また同社は、Web領域以外のさまざまな自社プロジェクトも手がけていて、そこで得た知見がクライアントワークにも活かされているという。
「飲食店経営、食器ブランドの運営、工芸作家のプロデュースなどを行っています。こうした自社プロジェクトを通して、たとえば飲食店経営の場合では、お店の運営方法やWebサイトでの表現などで実験的な取り組みができ、新たな知見やデータを得ています。もともとVOICEのクリエイターがWebサイト以外の領域もデザインできるということを広めるためにスタートしました」

こうした強みが活かされた事例の一つが、「ルビーロマン」のブランドサイトだ。クライアントの青果店サカイダフルーツは、超高級ぶどうであるルビーロマン専用のWebサイトを制作することにした。
「取り扱う商品の希少性を訴求するために、生産に関するストーリーを伝える企画やデザインを提案しました。なかでも気を使ったのはSEO対策で、キーワード選定やレポーティングなどに注力した結果、前年と比べて数倍の売上を記録しました」

効果を発揮することができたのは、自社で運営する金沢の飲食店「フルオブビーンズ」のWebサイトで得た経験も大きい。
「金沢は観光地なので特徴的な飲食店も多くあります。その中からフルオブビーンズを選んでいただくために、定期的にニュース記事を更新するコンテンツマーケティングを実施してきました。これによりSEO効果が上がり、お店を深く知ってもらうことにも繋がります」

各案件で成果を出しているのは、それだけ確かなクリエイティブ力を持っている証だが、そんなVOICEのコーポレートサイトは意外なほどシンプルなつくりとなっている。
「当社のサイトは、余計なものを付けず、あるがままの姿で美しいカブトムシのようなクリエイティブを目指したいという思いを表現しています」

こうした確固たる信念があるからこそ、幅広い提案ができるのだろう。

ドメイン名の選定もブランディング視点で考える

前述の事例では、いずれもJPドメイン名が使われている。
「ドメイン名は、コンパクトで、エンドユーザーが直感的に理解しやすいものを意識しています。日本ということが明確になるので、『.jp』を一番最初にご提案させていただくことが多いですね。ルビーロマンとフルオブビーンズは、日本のブランドであることをアピールするため『.jp』にしました。自社サイトをコーポレートサイト感のある『.co.jp』ではなく『.jp』にしたのは、サイト開設当初は『.jp』が出たばかりの時期で、見た目がスマートだったのと、会社というよりはクリエイティブチームであるということを表現したかったからです」

つまり、JPドメイン名を使うことも含めて、ドメイン名の文字列もブランディングの一環であるということだ。このように、徹頭徹尾ブランドを重視しているVOICE。今後はどのような展望を抱いているのだろうか。
「クライアントワークとしては、要望を叶えるだけではなく、潜在的な価値を顕在化させる提案を続けていきたいと思っています。自社プロジェクトについても、新たなチャレンジをしたいという思いを持つ社員は大勢いますので、ボトムアップで進めていきたいですね」

ルビーロマン

青果店サカイダフルーツが取り扱うぶどう「ルビーロマン」のブランドサイト。石川県が誇る超高級ぶどうを全国に広げるため、生産を行う上での苦労やそこにかける生産者の思い、商品の魅力を文章と写真で表現している。ページのどこにいてもお取り寄せボタンが表示される導線設計や、品種名を意識したロゴ制作などにも注力。「お付き合いの長いお客様だけに期待を超えるためのハードルは高かったですが、その分喜んでいただけました」と塚田氏

フルオブビーンズ

VOICEが経営するカフェ&ダイニング、フルオブビーンズのWebサイト。最近ではSNSやグルメサイトだけでプロモーションを完結する店舗も少なくないが、「本当に興味を持ってくださる方に対して、より深い情報を提供するために独自のサイトは重要という考えからサイトを運営しています」と塚田氏。定期的なニュース記事の更新はSEO対策だけではなく、ファンエンゲージメント向上のためでもある。店舗の空間デザインなどもVOICEのデザイナーが手がけている

VOICE

VOICEの自社サイト。同社が創業当初から目指している「カブトムシのようにシンプルな美しさ」を実現するため、極力装飾や演出を排した機能美のデザインとなっている。実績情報を最もユーザーに見てもらいたいコンテンツとして定め、それらをシンプルに見られる構成にした。常にトレンドをキャッチし続けていくため、数年ごとにリニューアルをしているという

株式会社VOICE

Webサイト制作をはじめ、映像やグラフィック、空間デザイン、店舗プロデュースなどを手がける総合型のブランド構築企業。石川県内を中心に北陸や首都圏のクライアントも多く、豊富な知見と実績を有する。

JPドメイン名の種類

JPドメイン名は大別して3つの種類がある。それぞれの特徴や意味を把握しておこう。

汎用JPドメイン名:◯◯◯.jp

日本国内に住所を持つ組織・個人であれば、誰でもいくつでも登録できる。漢字やひらがな、カタカナといった日本語を使った、わかりやすく覚えやすいドメイン名にすることも可能

都道府県型JPドメイン名:○○○.aomori.jp/○○○.東京.jp など

日本国内に住所を持つ組織・個人であれば誰でもいくつでも登録できる。北海道から沖縄まで47都道府県すべてあり、○○○の部分と都道府県名の部分は日本語でも登録できる。地域とのつながりをアピールしたいサイトにおすすめ

属性型JPドメイン名:◯◯◯ .co.jp など

企業(co.jp)や大学(ac.jp)など、組織の種別ごとに区別されたドメイン名。日本で登記/設立された組織が、一つの組織につき一つだけドメイン名を登録できる。また、組織設立の6カ月前から登録できる(仮登録)制度もある

企画協力:株式会社日本レジストリサービス(JPRS)

Web Designing 2020年2月号 掲載