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立ち上げ時に知っておくべきECサイト構築の秘訣②
-“ECバブル”だからこそ見極めたいドメイン名の選定と安全性-

新常態の世の中にあって飛躍的に成長を遂げているEC業界。市場の成長は販売事業者やECサイトの構築・運用を手がけるWeb制作会社にとっては歓迎すべきものだが、急拡大中だからこそ疎かにしてはならないことにも目を向ける必要がある。今知っておくべきECサイト運営のポイントについて、日本のEC業界を牽引するJECCICA(一般社団法人ジャパンEコマースコンサルタント協会)で代表理事を務める川連一豊氏に話をうかがった。

川連 一豊 氏
JECCICA(社)ジャパンEコマースコンサルタント協会代表理事/フォースター(株)代表取締役
楽天市場での店長時代、楽天より「低反発枕の神様」と称されるほどの実績を残し、2003 年に楽天SOY受賞。2004年にSAVAWAYを設立、ECコンサルティングを開始する。現在はリテールE コマース、オムニチャネルコンサルタントとして活躍。

JECCICA(一般社団法人ジャパンEコマースコンサルタント協会)
https://jeccica.jp/
「Eコマースのナレッジセンター」を目指し、EコマーススペシャリストとEコマースコンサルタントを養成・認定する一般社団法人。人材育成だけではなく、セミナーやイベント、ブログなどの各種メディアを通じてECサイトに関する最新情報やノウハウを発信し、業界発展のための活動を展開している。

バブルに沸くEC市場の潮流と
ドメイン名の重要性

非接触が推奨される世の中の到来でEC市場は大きく成長し、“バブル”を迎えている。パソコンを持たない新規ユーザーが増えたため従来以上にスマホサイトからの利用が増え、ECサイトをスマホ向けのみで構築する企業もあるという。また、高齢ユーザーも増え、使いやすく文字が読みやすいデザインへとリニューアルするECサイトも出てきている。ユーザーのニーズとしては、エシカル消費やギルトフリー商品といった社会問題や環境問題、健康などに配慮した商品を求める意識が高まっているそうだ。

こうした潮流を押さえるのも必要ではあるが、ECサイト運用において「ドメイン名」が大事な要素であることは変わらない。競争の激しい今だからこそ、しっかりと考えておきたいポイントだ。ECサイトにおけるドメイン名の重要性を川連氏は次のように話す。

「ドメイン名はインターネットにおける住所であり、いい加減な名称ではユーザーが辿り着けません。特に避けるべきは、ドメイン名を後ほど変更できるだろうと考え、安易な名前で登録することです。基本的には、ユーザーの利便性を考え、現在認知されている企業や代表ブランド名を使うのが良いでしょう。しかし既にECサイトをブランドごとに展開している事例も少なくありません」

川連氏がコンサルティングを手がけた例では、老舗和菓子店「榮太樓總本鋪」※01が、「eitarosouhonpo.co.jp」というドメイン名を新規に登録し、それまで別々のWebサイトが存在していた5つのブランドを統合したECサイトを構築。シングルブランドに統一することで流入を一本化し、検索順位の向上を図っている。

ただ、あえて企業名やブランド名以外のドメイン名を提案する場合もあるという。ECサイトではないが、コンテナハウスの製造等を手がける「コンテナハウス2040.jp」※02のWebサイトでは、「containerhouse」というスペルは誰もが間違いなく入力できる一般的な単語ではないため、同社が取り扱うコンテナが20フィートと40フィートであったことから「2040.jp」というドメイン名を提案した。“特徴”をドメイン名に盛り込むことで、ブランディングに活かしているのだ。

JPドメイン名のメリットと
安心・安全への取り組み

川連氏が代表理事を務めるJECCICAが関わるECサイトでは、8割近くでJPドメイン名が使われているという。JPドメイン名を採用するメリットとして「日本発をアピールできること」が挙げられる。

「JPドメイン名を用いることで日本に拠点のあるショップだとわかり、信頼感を持ってもらいやすくなります。越境ECでも日本発であることがわかりやすいため、JPドメイン名を提案することが多いです」

また、個人情報を扱い決済を行うECサイトでは安心して取引できることが重要視されるので、安全性にもこだわりたい。

「個人情報に厳しい情勢を考慮しても、ECサイトではサーバー証明書※03の導入が必須だと言えます。そうしないと、Google Chromeで警告が表示されてしまいます」

最後に、これからECサイトに挑戦する事業者へのアドバイスをうかがった。

「非接触が推奨される状況が終わっても、一旦浸透したECへのニーズはなくならないでしょう。長く続けていけるようヒト・モノ・カネを整備し、『ECサイトを勉強してからチャレンジする』ことが大事です。何のノウハウも持たずに参入して、いきなり売れるようなことはほとんどありません。売れているECサイトには売れるだけの理由があるので先行事例を研究し、時には周囲にアドバイスを請いながら自社のECサイトを客観視してみると良いでしょう」

● ドメイン名は認知されやすいものに

例えば大手百貨店でECサイトを展開する際に、化粧品、食品、服飾品などの部門ごとにドメイン名を変えるというように、マルチブランド化しようとする企業は少なくありません。しかし、せっかく認知の高い店舗名を使わないと、ユーザーをECサイトへ動員しづらくなります。ドメイン名は後で変更の必要が生じることがないよう、しっかり考えて登録しましょう

● JPドメイン名で日本発だと伝わる

JPドメイン名は日本国内に住所のある組織・個人であれば登録できるため、ドメイン名に使うことで「日本の企業」「日本製」ということが伝わり、信頼感を持ってもらいやすいです。また、海外展開した際には、日本に拠点のあるショップのECサイトだという特徴がドメイン名だけで伝わります

(脚注)

※01 榮太樓總本鋪(https://www.eitarosouhonpo.co.jp/
創業200年以上の老舗の和菓子店。自社サイトのドメイン名は.comだが、ECサイトに.co.jpを登録している

※02 コンテナハウス2040.jp(https://2040.jp/
神奈川県を拠点に、建築専用のコンテナの製造や輸送、デザイン、施工等を手がけている

※03 サーバー証明書(https://jprsサーバー証明書.jp/
安全で機密性の高い通信を実現するもので、URLは「https」で始まる。詳細は上記Webサイトを参照

JPドメイン名の種類

JPドメイン名は大別して3つの種類がある。それぞれの特徴や意味を把握しておこう。

汎用JPドメイン名:◯◯◯.jp

日本国内に住所を持つ組織・個人であれば、誰でもいくつでも登録できる。漢字やひらがな、カタカナといった日本語を使った、わかりやすく覚えやすいドメイン名にすることも可能

都道府県型JPドメイン名:○○○.aomori.jp/○○○.東京.jp など

日本国内に住所を持つ組織・個人であれば誰でもいくつでも登録できる。北海道から沖縄まで47都道府県すべてあり、○○○の部分と都道府県名の部分は日本語でも登録できる。地域とのつながりをアピールしたいWebサイトにおすすめ

属性型JPドメイン名:◯◯◯ .co.jp など

企業(co.jp)や大学(ac.jp)など、組織の種別ごとに区別されたドメイン名。日本で登記/設立された組織が、一つの組織につき一つだけドメイン名を登録できる。また、組織設立の6カ月前から登録できる(仮登録)制度もある

企画協力:株式会社日本レジストリサービス(JPRS)

Web Designing 2021年8月号 掲載