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立ち上げ時に知っておくべきECサイト構築の秘訣③
-自社ECサイトのブランド戦略にドメイン名の選定が重要な理由-

業種業態に限らず多様な企業のD2C・ECマーケティングを手がけ、2020年にはマザーズ上場も果たしている株式会社いつも。日本のEC業界を牽引する1社である同社は、変化の著しい昨今のEC業界をどう捉え、現在は何を重視しているのだろうか。執行役員の立川哲夫氏とD2Cグループの渡邉麻衣子氏に話をうかがった。

立川 哲夫 氏
株式会社いつも 執行役員

渡邉 麻衣子 氏
株式会社いつも D2Cグループ

株式会社いつも
https://itsumo365.co.jp/
2007年の創業から15年で延べ1万件以上の契約実績を誇るD2C・ECマーケティング企業。顧客の自社ECサイト、Amazonや楽天市場などのモールにおけるマーケティング支援やコンサルティングはもちろんのこと、EC運営代行やD2C・ECブランドのM&A・成長支援なども手がける。EC業界全体の発展に寄与するため、セミナーや書籍出版などにも積極的に取り組んでいる。

ドメイン名はブランド戦略における
デザインの一部

ECサイト構築や戦略立案、コンサルティング、物流や倉庫業務も含めた運営代行、D2C・ECブランドのM&A・成長支援サービスなど、ECサイトに関わるあらゆる業務を手がける株式会社いつも。同社がこうした幅広い対応力を有するのは、日本のEC市場における特殊な事情が関係している。

「日本ではAmazonと楽天市場、自社サイトでECサービスを展開することが主流です。顧客の重複が少ないので、複数プラットフォームの使い分けをすることが、売上を伸ばすポイントになります。そのため、我々も各プラットフォームに対応できる体制をつくってきました」(渡邉氏)

15年に渡りEC業界の発展と共に成長してきた同社は、成果を出すために市場環境に適応していった結果、自然とカバーする領域が広くなっていった。昨今のEC市場の傾向をうかがうと、自社ECサイトを持つ企業が増加しているという。

「経済産業省によると、2020年の国内の物販系EC市場規模は約12兆円で、売上の多くはAmazonや楽天市場をはじめとしたモール型プラットフォームが占めています。しかしながら、自社ECサイトを持つ企業が少ないわけではありません。我々の顧客データでは10社中8〜9社は自社ECサイトを持っていますし、最近ではモール型プラットフォームで成功している企業ほど、リスクヘッジの意味も込めて自社ECサイトの強化に取り組むようになってきています」(立川氏)

自社ECサイトを持つメリットは、制約のあるモール型プラットフォームと違い、さまざまな形で製品や企業のストーリー・コンセプトを伝え、消費者と向き合ってコミュニケーションを取り、彼らの声を製品の改善や開発に活かしていくことができる点にある。自社ECサイトのデザインにおいては、個性や優位性を表現することが重要になるが、ここでいうデザインにはドメイン名の選定も含まれる。

「最近はQRコードや検索からWebサイトへアクセスするのが主流となり、URLを知らない若者も出てきました。しかしURLは、商品を買ってもらった際に購入者が目にしたりSNSなどでシェアしたりする販促物や梱包物などにも記されるものです。そのためデザインの一部と考え、企業名やブランド名とリンクしたわかりやすいドメイン名であることが重要になります。さらに、日本のドメイン名であることを表すJPドメイン名を選択することで、安心感を持ってもらえる効果も得られます」(立川氏)

非接触が推奨される昨今の社会では、買い物の形にも変化が生じている。EC事業者にとっても、ECサイトを通じた購買体験の向上がビジネスをより大きく左右するようになってきた。そうしたブランド戦略の一環として、ドメイン名の選定も外せない重要な要素となっている。

ECサイトにおける
ドメイン名選定のポイント

国内ECサイトではJPドメイン名を使うことで、顧客に日本品質・日本ブランドの印象を感じてもらいやすくなる。越境ECでは、商品・サービスだけではなく、ドメイン名の選定からローカライズを意識することがあるという。

「海外のECサイトで買い物をすることに抵抗がある人も少なくないのですが、海外のブランドがデザインやドメイン名をローカライズすると、日本向けのECサイトだと認識して、顧客に安心して買い物をしてもらいやすくなります。JPドメイン名を通じて消費者に安心感を与えられるのは大きな利点だと思います」(渡邉氏)

その他にも、株式会社いつもが推奨するドメイン名選定のポイントとして、極力シンプルなもの、SEO効果も考慮して長く使用し続けられるドメイン名にすること、可能であればブランドサイトとECサイトを統合して同一ドメイン名内で運用することなどを挙げていた。

最後に同社の今後の展望をうかがった。

「事業承継や人材確保が難しい事業者や、良い商品があってもうまく売れていない事業者などに対して、資金や資源を提供してECサイトでの販売を伸ばすお手伝いをしていきながら、EC業界全体を盛り上げていきたいです」(立川氏)

EC業界のリーディングカンパニーとして“いつも”変化を見据えながら、今後もそれに対応する進化を続けていくのだろう。

●ドメイン名もデザインの一部

ドメイン名はショップカードや配送時のダンボールなどにも印刷するもの。日本を表すJPドメイン名を使用していることにより、ショップへの信頼感が醸成される。そうした意味でも、ドメイン名はデザインの一部だと考えて選定すべきだろう

● JPドメイン名でローカライズし安心感を

海外のブランドによる日本向けのECサイトでも、JPドメイン名を採用していることが多い。ドメイン名がきちんとローカライズされていることで、国内企業のショップと同様に安心して買い物ができるという印象を利用者に持ってもらえる

JPドメイン名の種類

JPドメイン名は大別して3つの種類がある。それぞれの特徴や意味を把握しておこう。

汎用JPドメイン名:◯◯◯.jp

日本国内に住所を持つ組織・個人であれば、誰でもいくつでも登録できる。漢字やひらがな、カタカナといった日本語を使った、わかりやすく覚えやすいドメイン名にすることも可能

都道府県型JPドメイン名:○○○.aomori.jp/○○○.東京.jp など

日本国内に住所を持つ組織・個人であれば誰でもいくつでも登録できる。北海道から沖縄まで47都道府県すべてあり、○○○の部分と都道府県名の部分は日本語でも登録できる。地域とのつながりをアピールしたいWebサイトにおすすめ

属性型JPドメイン名:◯◯◯ .co.jp など

企業(co.jp)や大学(ac.jp)など、組織の種別ごとに区別されたドメイン名。日本で登記/設立された組織が、一つの組織につき一つだけドメイン名を登録できる。また、組織設立の6カ月前から登録できる(仮登録)制度もある

企画協力:株式会社日本レジストリサービス(JPRS)

Web Designing 2021年10月号 掲載