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注目の制作会社の視点を探る
―Webサイトの構築・運用からドメイン名選定まで⑯―

徹底的な分析と深い理解で
クライアントの本質的な魅力を伝える

quip Design
quip Designは、企業のブランディングに必要なあらゆるツールをトータルプランニングする力に長けたデザインスタジオだ。高いクリエイティブ力や幅広い対応力、懇切丁寧なヒアリングなどが支持され、規模や業態を問わず多くのクライアントから引く手あまたとなっている。彼らは、日々どのような考えで仕事に臨んでいるのだろうか。クリエイティブディレクターの平出杏氏、テクニカルディレクターの平出修二氏に話をうかがった。

クライアントの魅力や課題を見極め
最適解を提案

3名で構成される少人数のデザインスタジオながらも、多くのクライアントから引き合いが絶えないquip Design。クリエイティブ力に加え、一つひとつのプロジェクトにオーダーメイドのように取り組む姿勢が評価されている
「自分たちがつくりたいものではなく、プロジェクトの本質を捉え、クライアントにとって本当に必要な提案をしようと決めています。形式だけの会議や資料作成をせず、その分クオリティアップに時間を使います」(平出杏氏)

徹底的にクライアントを理解・分析し、その商品やサービスに深い興味を持つヒアリングも同社が支持を集める理由だ。

「取り扱う商品やサービスをしっかりと調べ、応援する気持ちで取り組んでいます。ヒアリング時にはエンドユーザーも見据えているので、ときには『これでは売れないと思います』と正直に話し、商品開発やコンセプト設計から携わることもあります」(平出杏氏)

優先すべきは商品やサービスの良さを伝えることであり、Webサイトなどの制作物はツールと位置づけているという。自社サイトも一般ユーザーにも自社の強みを伝える内容へとリニューアルした結果、案件の依頼や採用の問い合わせ数が増加したという。

学習院の広報マガジン「G.LiFE Web」の事例では、趣ある学舎や構内の豊かな自然、等身大の学習院生の姿をより魅力に感じるコンテンツ制作に注力できるよう、CMS構築や運用体制を整えながらも、学習院らしさを感じる「伝統」と「気品」をトーン&マナーに落とし込み、和色&和柄装飾が広報誌と連動する仕組みを実現した。

また、動画で商品を紹介するオンラインショッピングモール「コレミテ!!」の事例では、「大手サイトとの差別化を図り、安心して買い物ができるモールだとアピールするために国内企業を応援するWebサイトにしてはどうか」と、ビジネスの方針も含めて提案した。まさにトータルプランニングを実現しているのだ。

JPドメイン名が持つ
信頼とリズミカルという魅力

quip Designでは、業種やサービスに合わせてトップレベルドメインを提案している。
企業には国内に登記がないと登録できない「.co.jp」を。国内向けサービスにも国内に住所がないと登録できないことによる信頼感からJPドメイン名をクライアントに勧めることが多いそうだ。加えて、JPドメイン名にはこんな魅力があるという。
「ドメイン名やサイト名を提案する時は、呼びやすさ、伝わりやすさ、発音したときの気持ち良さを考慮します。特にドメイン名は、短く響きが良いと印象に残りやすくなります。JPドメイン名は2文字ゆえのリズム感や語感の良さも魅力です」(平出杏氏)

同社のドメイン名「qpqp.jp」も、キャッチーで覚えやすいものにと考えて2005年に登録し、屋号はドメイン名を元に決めたという。
「サイト名やサービス名をご提案する際、ドメイン名が登録できるものをお勧めします。また、ドメイン名には、口頭で伝える際に間違いが生じやすい『-』などの記号は極力用いないようにしています」(平出修二氏)

この点からも、quip Designがいかに伝えることに注力しているかがわかるだろう。
最後に今後の展望をうかがうと、実に同社らしい回答があった。
「国内には良いサービスや商品がまだたくさんあると感じています。そうしたモノの良さを伝えたい、何かを成し遂げたいという思いを持つクライアントが活かせるツールをつくっていけたら幸せです。今後もご縁のあった案件一つひとつを丁寧に対応するために、技術の向上に注力していきたいです」(平出杏氏)

quip Design

以前はビジュアル重視のデザインだったが、より一般のユーザーにも自社の強みを伝えられるよう、2020年に現在の形にリニューアル。それでもデザインへのこだわりが伝わるよう、タイポグラフィを多用した印象的なデザインとなっている。屋号の由来となったドメイン名「qpqp.jp」は、qpが植物の芽を連想する形状なのも選んだ決め手となった。他にも屋号に関連したドメイン名を複数登録し、将来的に独自のサービスサイトを展開する構想があるという

G.LiFE Web
学習院の今を綴る広報マガジン

学校法人学習院が運営する、幼稚園から大学まで7つの学校にまつわる情報を発信するWebマガジン。もともと紙媒体だけで発行していたものを、quip Designが誌面リニューアルとWebマガジンの立ち上げを手がけた。ロゴ制作、広報誌の企画編集、デザインなども同社で担当しており、毎号日本の伝統色でキーカラーを設定し、Webと誌面を連動したデザインにしている。ドメイン名においては、当初「webglife」などの案も出ていたが、「学習院の『G』を先に表記した『G.LiFE』という名称が覚えやすいと考え、ドメイン名には『glifeweb.jp』を提案しました」と平出修二氏

コレミテ!!

動画で商品の特徴や魅力を紹介するオンラインショッピングモール。ASPやCMSの導入からカスタマイズまで、一括してquip Designが手がけている。オンラインモールとしての賑やかさを演出することを意識した色使いとデザインにし、マスコットキャラクターも同社で提案した。サービス名はクライアントが発案したものだが、
「もし『koremite.jp』というドメイン名が登録できなければ、サービス名の変更を提案していたかもしれない」と
平出杏氏。常にサービス名とドメイン名を統一することを重要視している

quip Design

郡馬・高崎と東京・南青山を拠点に全国で活動。ゴールを見据えたトータルブランディングを担い、ネーミング、ロゴ、Web、グラフィック、パッケージ、サイン、コンテンツ制作などさまざまな実績とCMSフルカスタムなどWeb開発運用が強み。器店「うつわ ぬくもり」も運営。

左から平出修二氏、平出杏氏

JPドメイン名の種類

JPドメイン名は大別して3つの種類がある。それぞれの特徴や意味を把握しておこう。

汎用JPドメイン名:◯◯◯.jp

日本国内に住所を持つ組織・個人であれば、誰でもいくつでも登録できる。漢字やひらがな、カタカナといった日本語を使った、わかりやすく覚えやすいドメイン名にすることも可能

都道府県型JPドメイン名:○○○.aomori.jp/○○○.東京.jp など

日本国内に住所を持つ組織・個人であれば誰でもいくつでも登録できる。北海道から沖縄まで47都道府県すべてあり、○○○の部分と都道府県名の部分は日本語でも登録できる。地域とのつながりをアピールしたいWebサイトにおすすめ

属性型JPドメイン名:◯◯◯ .co.jp など

企業(co.jp)や大学(ac.jp)など、組織の種別ごとに区別されたドメイン名。日本で登記/設立された組織が、一つの組織につき一つだけドメイン名を登録できる。また、組織設立の6カ月前から登録できる(仮登録)制度もある

企画協力:株式会社日本レジストリサービス(JPRS)

Web Designing 2022年4月号 掲載