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企画からドメイン名の選定まで
発注側・制作側の両者に聞く

成功するWeb 制作は“ココ” にこだわる
自社ユーザーの行動と価値観にフォーカス
言葉と配慮の積み重ねが「信頼」を生む

Isono Revitalizing Office 合同会社 × 乾陽亮設計事務所

Text : 久我智也 Photo : 梅田彩華

滋賀県で伝統工芸や地場産業に従事する事業所に対して、経営戦略の立案やブランディング構築、販路開拓といったコンサルティングを行うIsono Revitalizing Office合同会社。その顔とも言えるコーポレートサイトでは何よりも“ 言葉”が重視される一方で、その主たる業務である「コンサルティング」という言葉がほとんど使われていない。そこには地域とともに歩むことを決意した、同社代表・磯野研さんの思いが表れている。

Isono Revitalizing Office 合同会社
代表社員(中小企業診断士)
磯野 研さん
Ken Isono

中小企業診断士として、人と想いを大切にする経営コンサルティングを実施。割れた器を漆で再生する金継ぎ作品などの伝統工芸を世界に発信している

乾陽亮設計事務所
乾 陽亮さん
Yosuke Inui

和文化・伝統工芸デザイナー。戦略の企画からプロダクト、パッケージ、グラフィック、Webサイトなどのデザインを統合的に捉え、デザインの役割を見据えた長期的な提案を得意とする。京都芸術大学講師

言葉を選び、積み重ね信頼を獲得する

磯野研さんが「コンサルティング」という言葉を使うことに慎重なのは、二つの理由がある。

「私の仕事は、この地で育まれてきた、仏壇の漆塗り技法を源流に持つ『金継ぎ』や、国の指定伝統的工芸品である『近江上布』といった、優れた伝統工芸・地場産業の価値を、そうした事業に取り組む方々とともに、広く発信していくことにあります。そのために選んだ“Rリバイタライジングevitalizing( 元気にする)”という言葉を大切に使っていきたいと考えたことがその理由の一つです」

もう一つはコンサルティングという言葉の持つ“ 軽さ”。

「これはあくまでも私の感覚なのですが、伝統的な価値観を大事にされてきた方々にとって、コンサルティングという言葉は響かないように思うのです。安易に多用してしまうと『怪しい仕事をしているヤツだ』などと思われかねません」

そこで磯野さんは、コーポレートサイトの構築にあたって旧知の仲であった乾陽亮設計事務所の乾陽亮さんに、「“ 信頼”を得られるデザインにしてほしい」と依頼する。

「弊社の場合、コーポレートサイトに訪れるユーザーの多くが、私と名刺交換した方や、イベント等で配布したパンフレットをお渡しした方ということになります。彼らは私の会社が信頼できるのか、という点を確認するためにサイトを訪れます。それに対応したサイトにしたいと考えました」

磯野さんの要望に応えるため、乾さんは同社の名刺やパンフレット、Webサイトのビジュアルコンセプトを統一し、ひと目で「あの会社だ」とわかるようにすることと、信頼を獲得するためのキービジュアルに、磯野さんの「言葉」を使うことを提案した。「磯野さんはサポートを求める顧客に対して、丁寧に、そして熱心に語りかける人。その様子をそのまま表せば信頼につながるのでは、と考えました」

使う言葉と表現は、2人で時間をかけて選んだ。結果、同社のサイトは、顧客と真摯に向き合う、磯野さんらしさを備えたページとなった。

サイトの隅々にまで気を配る
その理由とは?

信頼の獲得を第一に考えた磯野さんの配慮は、サイトの隅々にまで、例えばドメイン名にも向けられた。

先述の通り、同社のコーポレートサイトを訪れるメインのユーザーは、“ 磯野さんと名刺交換したり、パンフレットを手にした人” だ。彼らがサイトにアクセスする際に、不安や疑念を抱かせることのないように、社名をそのままURLとして採用した。

「そこに信頼感や安心感があり、ひと目で日本の組織であることがわかる『JPドメイン名』を組み合わせ、isono-revitalizing-office.jpとしました」

会社を立ち上げ、Webサイトを公開して約4年。磯野さんは今、「ドメイン名は事業者にとって水のようなもの」だと感じていると話す。

「普段は特段、気を遣うことはないのですが、トラブルがあって使えなくなったら大変です。だからこそ日々安心して利用できる、JPドメイン名を選んでよかったなと感じています」

今日も近江の地を走り回る磯野さん。その足元を固めているのは「信頼」の二文字だ。

POINT@

文字情報を中心の構成

文字情報を重視した同社サイト。METHODページでも文字を中心とした構成ながら、わかりやすくまとめている。なお文字情報の一つであるドメイン名もまた、わかりやすさと安心感を重視して選択している

isono-revitalizing-office.jp

POINTA

ビジュアルコンセプトの統一

下で紹介しているのは、IsonoRevitalizing Officeのパンフレット。ひと目でわかるように、Webサイトとビジュアルコンセプトが統一されている(名刺も同様)。ユーザーの行動パターンを念頭に置いて採用した

JPドメイン名の種類

JPドメイン名は大別して3つの種類がある。それぞれの特徴や意味を把握しておこう。

汎用JPドメイン名:◯◯◯.jp

日本国内に住所を持つ組織・個人であれば、誰でもいくつでも登録できる。漢字やひらがな、カタカナといった日本語を使った、わかりやすく覚えやすいドメイン名にすることも可能

都道府県型JPドメイン名:○○○.aomori.jp/○○○.東京.jp など

日本国内に住所を持つ組織・個人であれば誰でもいくつでも登録できる。北海道から沖縄まで47都道府県すべてあり、○○○の部分と都道府県名の部分は日本語でも登録できる。地域とのつながりをアピールしたいWebサイトにおすすめ

属性型JPドメイン名:◯◯◯ .co.jp など

企業(co.jp)や大学(ac.jp)など、組織の種別ごとに区別されたドメイン名。日本で登記/設立された組織が、一つの組織につき一つだけドメイン名を登録できる。また、組織設立の6カ月前から登録できる(仮登録)制度もある

本記事は株式会社日本レジストリサービス(JPRS)とのタイアップです。

Web Designing 2024年12月号 掲載